熱血漢な蜥蜴の憑神。
ドラゴンに見立てて作られたが、当然ドラゴン程の力があるわけもなく初代主人からは期待外れの役立たずとして扱われた。
現在の鍛冶工の主人との関係は非常に良好。
設定変更点
描写キーワード
全てを焼き尽くす「圧倒的な炎の力を持つドラゴン」を模して作られたトカゲの憑神。 しかしただのトカゲである彼がドラゴンに匹敵する力を持てるはずもなく、実際に発現したのは「火の扱いに長ける」という比較的穏やかな権能だった。
初代主人である魔術師はムゲンの権能を「期待外れ」と決めつけ彼を虐げ酷使し、ムゲン自身も主人の期待に応えられない自分を「役立たず」と感じ、長く己を責め続けていた。
現在は2代目以降の主人や良くしてくれる大勢の人々と関わったおかげで明るい性格になっているが、根底は未だ自己肯定感が低く、非常に謙虚で慎重な部分は変わっていない。 一見熱血漢に見える**「必要なもんがあるなら俺に任せな!何でも作ってやるよ!」**という言葉も、誇張や自信過剰ではなく「どんな雑用でも言いつけてください」くらいの意味。
仕事としては神連からの道具制作の依頼が多く、かなりの数の呪祖や危険な憑神の討伐、封印に貢献している。
設定の決まっていない時点でのラフのため和服。あとでキャラデザを整えてヨーロッパの服に変更。
「焼き尽くすだけが炎の力じゃないさ」
魔術師に虐げられ酷使される日々の中、魔術師の使いで訪れた鍛冶屋でのアダマンティオスとの出会いがムゲンの今後を大きく変えることになる。
ムゲンが魔術師に虐げられているという噂を耳にしていたアダマンティオスは実際に彼の姿と権能を目の当たりにし、その境遇に憤りを覚え「お前はこんな扱いを受けるべき存在じゃない。次は俺と契約しろ」と声をかけた。 ムゲンはその言葉に心を動かされたものの、憑神の契約は一度結ぶと破棄出来ないため、その時は魔術師のもとに留まるほか選択肢はなかった。
それでもアダマンティオスはムゲンに何か出来ることがあれば力を貸すと約束し、数年後魔術師が陰謀を企てた反逆者として粛清された際にすぐさま憔悴しきったムゲンを迎え入れ、2代目の主人として正式に神憑きの契約を結んだ。
その後ムゲンはアダマンティオスの弟子という扱いで鍛冶を学ぶ事になる。 鉄を熱し、叩き、形を生み出す作業は彼の権能と性格にぴったりだった。 ムゲンは初めて自分でも誰かの役に立てることを知って感激し、以後物作りの道を歩むことになる。
設定の決まっていない時点でのラフのため和服。あとでキャラデザを整えてヨーロッパの服に変更。
「お前が力を使うたびに、笑顔が生まれる。それはとても素晴らしいことだろう?」
鍛冶を学び物作りの道を歩むようになったムゲンは、晩年のアダマンティオスの紹介で次の主人になる菓子職人ミロスと出会う。 ミロスは腕利きの菓子職人として名を馳せており、その巧みな技術と独自のセンスで周囲の評判を集めていた。
彼はアダマンティオスの依頼を受け、ムゲンの権能が菓子作りにどのように役立つのかを試してみることにした。 最初は戸惑うムゲンだったが、ミロスは彼にこう言った。 「お前の力は幅広い分野で役立てることができる。まさに無限の可能性を秘めているんだ」
その言葉に励まされたムゲンはアダマンティオスの死後、ミロスのもとで菓子作りの修行に励むことになる。 彼の権能は鍛冶のような荒々しい炎だけでなく、繊細な温度管理にも応用出来る。 砂糖を煮詰める微妙な火加減、チョコレートのテンパリング、焼き菓子の均一な焼き上がり――全ての工程でムゲンの権能は大いに活躍した。
ミロスのもとでの日々はムゲンにとって新たな価値観を教えてくれるものだった。 彼は鍛冶とは違う「食べる人を笑顔にする物作り」の魅力に気付き始める。 ミロスとの時間はムゲンにとって菓子作りだけでなく、自分の力に誇りを持つための大切な経験となった。
「それは人の心を動かす力にもなる」
ムゲンは6代目主人の元での修行を終えた後、今度は中国の彫金師である黎 陽生と契約し師事することになる。 陽生は緻密な技術と芸術的な感性で知られる彫金師であり、彼が生み出す作品はその美しさから「魂が宿る」とまで評されるほどだった。
工房でムゲンと初めて対面した彼は、ムゲンの権能を試すようにこう尋ねた。 「お前の炎は、魂を吹き込むことは出来るか?」
ムゲンは最初、この問いに戸惑った。これまで彼が関わってきたのは実用性を追求するものばかりで、芸術としての美しさに関してはまるで未知の世界だったのだ。 しかし陽生の真剣な眼差しとともに手渡された彫金用の金属片を見て、彼は新たな挑戦に取り組むことを決意した。
陽生との作業はムゲンにとって今まで以上に繊細さと緻密なコントロールが求められるものだった。 彫金の世界では一瞬の火加減や金属の温度が作品の完成度を左右する。ムゲンは自らの権能がその細やかな作業や模様を刻む工程に応用できることを学び、火の扱いが作品の命を決める重要な要素であると実感していった。
陽生との日々は、ムゲンにとって自分の権能のさらなる可能性を知る重要な経験となった。 「役に立つ力」としてだけではなく、「美を創造する力」としての新たな道を示されたのだ。
「地味に見える力ほど本当に大切な場面で必要になる」
ムゲンが陽生から8代目の主人として紹介されたのは、名刀匠と知られる赤鎌 嘉南(あがま かなん)だった。
嘉南は刀匠としての高い技術力と厳格な姿勢で広く尊敬を集めていたが、私生活では競馬や競艇、麻雀など賭け事が大好きな一面もあった。 そのため「勝負に必ず負ける」というムゲンの代償を知った当初は契約に強く抵抗した。賭け事から足を洗うのは彼にとって大きな未練だったのである。
しかし妻と娘から厳しく叱責されたこと、さらに最近生まれた孫の存在が彼の心境を変えた。 孫のために賭け事から足を洗うべきだと決意した嘉南は自らの未練と決別し、ムゲンと正式に神憑きの契約を結ぶ。 こうしてムゲンは嘉南の工房で新たな道を歩むことになった。
嘉南は仕事に対して一切の妥協を許さなかった。 工房では伝統を重んじつつも、常に前回を超える最高の完成度を追求し、弟子たちには厳しくも的確な指導を行っていた。
ムゲンも例外ではなく、些細なミスでも容赦なく指摘され何度もやり直しを命じられる日々が続いた。
最初はその厳しさに戸惑うこともあったが、ムゲンには嘉南の指導に込められた仕事に対する揺るぎない信念が分かっていた。
「使い手の命を守るものだからこそ、妥協は許されない」 その言葉に自分の手が生み出すものが誰かの生死を分ける責任を負うと改めて意識したムゲンは、鍛錬を積み重ねる決意を新たにするのだった。
補足1
補足2
補足3